藤野の余韻を胸に吉祥寺でバスに乗り換え真理ちゃんと西武車庫前で降りる。
小雨ぱらつく中すぐに手作りパン&カフェ「ハーベスト」に着く。
オーナーは私と同い年で、お客さんに安心して食べてもらえるように
食材の放射線測定をしている。判定結果を何枚か見せて頂いたがその誠実さに感動する。
農業もしたかったが同じ気持ちでマチを耕していると語る志の高いパン職人さんだ。
カフェを併設してるのも素敵だ。

このコンサートを準備してくれたのは20年ほど前に新得に住んでいた久美さん。
3・11後にメールをくれてからおつきあいが再開した。
子育て中の久美さんは放射能汚染を憂う石神井のママ友たちと何かできることはないかと
バザーを開いたりしながらネットワークを広げていた。
彼女達の願いは安心して子どもを育てられる地域作りだ。

そんな思いが今回のライブにもまた会場選びにも貫かれていた。
始めに川本真理さんも共に農場の紹介をパソコンのスライド写真を
見てもらいつつさせてもらった。約1時間。



その途中お客として現れたのはなんと!
4人組女子ロックバンド「新月灯花」の中野裕子さん(Vo G)と田中美知子さん(Vo G)の二人だった。

新得空想の森映画祭への出演で彼女達が我が家に滞在してから半年ぶりの再会だった。
バイトがあるので最後まではいられないと聞き、急遽最初に歌ってとお願いする。
突然の無茶ぶりにも関わらず二人は差し出した私のギター1本で「打ち砕いて」を歌ってくれた。
久美さんにも新月灯花のことは話してあったので実際に聴いてもらえて良かった。
お客さんにとってもサプライズなプレゼントだったに違いない。

私の中で新月灯花は高校のとき初めてレッドツェッペリンを聞いた時以来の
衝撃といっても過言ではないロックバンドなのだ。
スーパーバンドの出現。

サウンド、コーラスだけではなくそれぞれがボーカルをとり
しかも捉えているテーマが本当に大事なことばかりなのだ。
ヒロシマナガサキのこと沖縄戦のこと放射能汚染のこと人種差別のことドーナツ化現象のことetc。
どれも目を背けてはいけない忘れてはいけないことをコアに持っているが、
伝わりやすい言葉でさりげなくロックに時にはアコースティックなサウンドに乗せて表現していく。

さらに偉いのは震災後すぐに福島に支援物資を車に満載して運び、
今でも月1回は通い続けていること。
ライブ活動をどこでも行い笑顔とハートを被災地に届け続けている。
この3年で確かなネットワークを広げつつあるのは彼女達が制作した
「恋するフォーチュンクッキー福島KIDSバージョン」を観て頂ければわかると思う。
ライブの終わった夜彼女達から渡されたDVDを観ていて、
その中にこれがあって思わず涙した。
その心意気に。

偉大な音楽は洋の東西を問わずにその中心に「共に生きる」という視点をすえているものだと思う。
自分たちさえ売れればいいという姿勢とはまったく違う。
次回石神井は新月灯花とのジョイントをぜひ実現させたいと夢見ている。
それまでにも彼女達の活躍の場が広がってくれたらと切に願っている。

さてコンサートは無事盛況のうちに進んだ。
途中小さな子ども達もいたので自曲「みつばちぶーん」や「ちっちゃなおしり」も加え
アットホームないいコンサートだった。
川本真理さんの私へのサポート、そして自身のピアノゾロも深く皆の心に響いたと思う。
目を閉じて聴いていたお客さんのまぶたの裏にはどんな風景が浮かんでいたのだろう。

ひとつの空間で音楽という媒体でひとつになれる私たち人間は
全然捨てたものではない。
新月灯花の「打ち砕いて」で歌われているように見えない壁を作るのも人間なら
それを打ち砕いて新しい地平を広げることもできるのが人間なのだと思う。
その可能性があるのなら絶望するには早すぎる。

さいごに電子ピアノやPAを運んでくれた新得に2年間住んでいた家具職人の藤本さんにも感謝。
久美さんのつながりに、新月灯花に感謝。
そして神田から北海道に行くより大変だったといって駆けつけてくれたこやまさんにも感謝(笑)