久しぶりにいい本と出会った気がする。
新得町図書館に感謝である。
「ニッポンが変わる、女が変える」 上野千鶴子著 中央公論社

上野さんが3・11以降の日本をめぐって12人の女性と徹底討論したもの。
その突っ込み方がさすがだと思った。
表題のようにはうまくいかないのはこの討論の中に厳然と誰もが認めざるをえない。
それでも議論を深めどこに希望があるのかを探そうとするひたむきさに勇気を感じる。

思えばこの国はヘンだと思って来たが、3・11が起こってからは
露骨にヘンな国だということに多くの人が気がついたのではないだろうか?
この本に語る対談者もそれ以前の、例えば原発に抱いていた認識がすっかり変わった
ことに戸惑っているのも伺える。
恐ろしく知的に優れた人が原発は安全だと信じていた例はたくさんある。
あの管元首相までが事故後安全神話にだまされていたと語ったのだから、
その情報の大河の流れというものの中にいると見えないことが大きいのかと
あらためて驚く。

しかしヘンであることに多くの人が気がついたと自分で書きながら
実はまだ気がついていない人が圧倒的にたくさんいるのが真実なのではと
どこかで思っていて、これだけの原発事故を起こしながら何も変わろうと
しない国のやり方にも無関心でいられることが「ヘン」なのだ。
「ヘン」のセンサーが落ちてしまっているのだろうか?

少なくとも上野氏が挑んだ対談相手は全員「ヘンセンサー」を持っているので
頭がくらくらせずに読むことができた。
日本は駄目になって行くでしょうねと恐ろしい予想を語る人もいて絶望的な
気分にもなるがそれこそまともな意見のような気がする。

ひとつだけいいエピソードがあった。
ある女性が「絶望の反対語は何かしら」と聞いたとき
相手が少し考えてから「希望かな」と答えるとその女性は
「私はユーモアだと思うわ」と答えたとのこと。

でも思う。戦争も原発も硬直した男が進めて来たもの。
女性がそれをおだてあげた面もあるが、元来女性は
硬直しなくても生きていけて柔軟な強さがありその性質は
新しい時代を作るカギには違いないと思う。

「ニッポンが変わる、女が変える」ためにはこの
硬直した男どもを掃いてスペースを作らなくてはいけないのだが
はて、どうしたらいいのだろう。

でも問いは深まって来ている、と思う。