先日3週間と少し我が家に滞在し仕事を手伝ってくれた
ウィリー君を新得駅に見送った。
それだけの時間を共に家族のように過ごしたので
やはり見送ったあとは少し淋しい。

農作業は忙しかったし、
同時に進めていた納屋の補修やマキ作りなどもあり
ハイキングに連れて行くなど特別な事は何もしてやれなかった。
娯楽らしいことは映画「風立ちぬ」をいっしょに見に行ったくらいか...。

ウィリーは台湾大学の生命科学専攻の19歳で、
初めての日本旅行にも関わらず
高校でと大学で勉強しただけで日本語も話せるし本も日本語で読める。
これにはびっくり!英語もほとんど使わずにすんだ。

仕事時間以外はよく居間でうちにあった本を日本語でいつも読んでいた。
曰く、本を見るとワクワクするのだそうだ。

出発の前日の朝に共働学舎新得農場代表の宮島望さんの著書
「いのちが教えるメタサイエンス」(地湧社刊)をちょうど読み終えて
とても面白かったというので共働学舎に午後連れて行く事にした。
学舎内の「みんたる」に行きそこに働く友人にウィリーを紹介し
宮島さんの本を読破したことを伝え、宝石のように美味しいソフトクリームを食べながら
ぐるっと見学してそれなりに満足して帰って来た。

夕方その友人が電話をくれ、
ウィリーの話をしたところ宮島さんが食事でもしながら話したいとのことで
取る物も取り敢えず二人で飛んで行った。
なんせあちこち講演したりで忙しくなかなか会えない人、
こんなチャンスめったにない。

食堂の白いテント生地の屋根のついたテラスに宮島さんはいた。
挨拶もそこそこに宮島さんはメタサイエンスを中心にウィリーにいろんな
科学的な話をパソコンにまとめた画像を参考に話してくれた。
彼が日本人ではなく台湾人であることなどお構いなしに宮島さんは
ドンドン話すのだが、
驚いたのは、傍らで聞いている私がまるでわからない結晶体がどうの
電磁波がどうの、フラクタルがどうのを、
ちゃんとウィリーが理解して聞いていることだった。

頭のいい人同士って多少の言語が違っていても
図形などを見れば理解できてしまうんだと
自分とはかなり脳のデキが違うのを
改めて追認させられた(笑)。

ウィリーは最後に感動した本の著者本人と話をすることができてとても喜んでいた。
そして、
科学の進むべき道をいのちの素晴らしさと結びつけて考えている宮島さんと出会った事は
きっとこれから学び研究者になりたいウィリーに大きないい影響を与えるに違いない。
運がいいというほかはない。

来て早々脱原発路上ライブに連れて行き、
参院選があり、日本の若者が政治に関心が薄いことを不思議に思ったり、
TPPや遺伝子組み換えや戦争や平和についても
我が家での日常会話だったのでいろいろ知った事も多いと思う。

ほとんどは知らない方が幸せなことだったかもしれないがそれも現実。

でも科学を志す者がこうして手に豆を作ってマキを割ったり、
釘を打ったり、
人参の草取りを辛抱強く続けたりすることが、
何かとても大切で将来の人類に役に立つ何かを明らかにする力になるのではと思えて来る。
そんな希望も託してウィリーを見送った。

見送ったあとノートには「幸福な世界をめざして」と書かれていた。
こんな頭脳と優しいハートを持った若者がいることは世界にとっても希望だ、と思う。