先日北海道がんセンター名誉院長である西尾正道さんの講演が新得町公民館であった。
いわゆる反原発に偏った人ではなく医師として放射線医療にも長年携わって来た経験
をもとに原発事故後の現実と向き合っている方だ。
わからないものはわからないと明言されるところがいい。
たとえばサンマなどの漁獲量が減っているのは放射性物質によるものなのかという
質問に対して。

国民の2人に1人がガンになるといわれ戦後急増しているのは
くりかえし行われた大気中核実験による放射性物質汚染が一番考えられる
という見解だ。

もちろん化学農薬などもあるだろうし疑わしい原因は枚挙にいとまなく複合的で
あるにせよ、放射性物質、特に内部被曝については健康に良くないのは間違いないらしい。

ショックなのは泊村と岩内町のがんによる死亡率が突出していて
全道平均の2倍という高さだということだった。
西尾さんはたとえ事故がなくても原発、特に加圧水型は運転するだけで発生する
トリチウムという放射性物質がその原因ではないかとおっしゃった。
トリチウムに関しても資料を示しながら説明してくれたが
凡庸な自分の頭では理解出来なかったけれども、
一度ネットに上がったのに問題にする人が現れたとたん削除されたというから
これは本物だと思った。

会場には子育て中の若い母親の姿もたくさんあった。

そもそもこの講演を依頼したのは新得町の学校給食の食材のセシウムなどの
チェックを依頼されていた方だった。
昨年福島近隣県産の野菜から委託されてから始めてセシウムが検出されたが
あろうことか結果を見る前に学校給食に出されてしまったというのだった。
抗議すると国の基準値100ベクレルを大きく下回っているから大丈夫だと
言われたということだ。
そこで専門家をお呼びしてみんなで勉強しようと開催されたのだった。

西尾さんの口から国や世界の原子力機関のやっていることに対して
何度もインチキだという言葉がついて出た。

たとえばモニタリングポストは実際計測するとどれも4割くらい低く表示されて
いるという。子どもほど放射線に敏感であるのに放射線管理区域と同じだけの
線量で通学させ生活させていることに憤っておられた。
除染もまた効果があるのは2割くらいでゼネコンの儲けにしかならないということだ。

まだこの町にはこれらのことに問題意識を持っている人がいるから
こんな有意義な講演も聞くことができる。
それはかすかな救いでもあり希望でもあると感じた4時間もの講演であった。

ちなみに2011年直後はたくさん講演依頼があったが今年はここ新得のみだという。
事故後7年もたてば人の関心はうすれ忘れられていくということなのだろう。
自分だって哀しいかなこのような講演でもなければ忘れてしまうのだ。
それが一番怖いことだと思う。